盲ろう者からのメッセージ

消えゆく光と音の中で

東京盲ろう者友の会 
理事長 藤鹿 一之(全盲ろう)

 皆さんは、日ごろ、どのような日常生活を送っていらっしゃるのでしょうか?
就労、就学、ショッピング、カフェで友人と談笑、スマートフォンでさまざまな情報収集……。毎日、さまざまなことをされているでしょう。

 私は生まれたときは、弱視で健聴でした。

 小学6年生のころ、原因不明の難聴となり、その後、視力と聴力が徐々に落ちていきました。26歳のときに、全く見えず、全く聞こえない全盲ろうとなり、光と音を失いました(今は人工内耳の手術を受け、少し聞こえるようになりました)。

 全盲ろうの自分は単独で通勤も通学もできず(移動の困難)、相手の声が聞こえないため、カフェで目の前に座っている友人と話をすることもできませんでした(コミュニケーションの困難)。
 また、どのような商品が、どこに置かれているかわからないので買い物もできず、新聞を読んだりテレビを見たりすることもできないため、情報収集もできませんでした(情報入手の困難)。

 しかし、盲ろう者向け通訳・介助者派遣事業(盲ろう者へ通訳・介助ができる支援者の派遣)を利用することにより、多くのことが可能になり、心に光が差し、心に音が届くようになりました。

 目と耳に障害があっても、適切な盲ろう者向けの支援につながることで、盲ろう者の社会参加が可能になります。
 まずは、多くの方々に盲ろう者のことを知っていただきたいです。
 ご支援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

盲ろう者が生活を送るためには……

東京盲ろう者友の会 
副理事長 森 敦史(全盲ろう)

 私は生まれたときから見えず、聞こえません。

 私のような先天性盲ろう児は、家族や周囲の人の会話やテレビなどを見聞きすることができないため、あらゆる情報が「自然に」入ってくることはありません。
 そのため、私は洗濯機や包丁などといったあらゆる物に触ることから始まり、海に行って釣りをして獲った魚を焼くなどというようなことをたくさん経験しました。
 また、さまざまな人と手話で会話をし、点字でメールや本の読み書きもしています。
これらを通して、言葉を覚えるだけでなく、洗濯や海といったような言葉の概念を理解するようになりました。

 私は大学院に進学することができましたが、これは家族、支援者、指導者の皆さんが私にこれらの「経験(体験)させる」「触れさせる」「さまざまな人たちとコミュニケーションを取る機会を与える」というようなことに重点を置きながら、私の教育や支援に取り組んでくださっているからです。

 このような経験を活かし、盲ろう児の教育や盲ろう者の活動に関わる仕事に携わりたいです。

通訳・介助者を通して感じる世界

東京盲ろう者友の会 
副理事長 當山 良一(弱視難聴)

 私は生まれつきの難聴で、30代半ばから視力が極端に低下し弱視難聴となりました。そのことによりできないことが増えていく中、すべてにおいて消極的になっていた時期がありました。そんなとき、幸運にも友の会とつながり、通訳・介助者派遣サービスを利用できるようになったことで、私の世界は広がりました。

 学習会や交流会への参加をはじめ、ウィンドーショッピングを楽しんだりコンサートや演劇の鑑賞、スポーツ大会への挑戦など、通訳・介助者と一緒ならばどこへでも出かけていくことができます。
 特に、手話講習会での受講の際、通訳・介助者の触手話を通して手話を学ぶことができたことは、私の行動の幅を広げる大きな転機となりました。

コミュニケーションを取りもどすまで

田幸 勇二(全盲ろう)

 ろう学校では口話や手話を交えながら周りの人たちと会話していましたが、正面のごく限られた範囲しか見えず、集団でのやり取りを追うのが難しく、一人取り残されることもしばしばありました。

 高等部の担任から失明宣告を受け、周囲から勧められて点字の基礎を一通り学びましたが、耳から覚えた言葉を一つも持たない私にとって仮名ばかりの点字は強い抵抗を感じたものでした。

 まだ盲ろう者向けの福祉制度がなかったころ、視覚障害者向けの生活訓練で知り合った全盲の同期生から指点字の手ほどきを受け、新しいコミュニケーションに目覚め、点字への抵抗感も薄らいでいきました。

 手指で相手の手話を読み取る触手話の存在を知ったのは盲ろう者の集まりに参加したときでした。疎遠になっていたろう学校の同級生や地域のろう者とも少しずつ触手話で話し合えるようになりました。

 こうして他者とのコミュニケーションを曲がりなりにも取りもどしている私ですが、交流会や買い物など、いろいろな場面で通訳や状況説明、移動介助をしてくれる通訳・介助者のサポートも欠かせないものになっています。

盲ろう者の自立と社会参加を目指して

峰岸 夏美(弱視ろう)

 私は、生まれたときはろう者でした。
 目の病気で手術を受け、その後、目が見えにくくなってしまいました。
 これからどうすればよいか、不安になりました。
 そんなとき、友人から東京盲ろう者友の会があることを聞き、友の会の活動に参加するようになりました。

 今では通訳・介助者依頼をしたり、学習会、手話サークル、指点字サークルなどに参加したりしています。
 指点字は難しかったですが少しずつ練習して、盲ろう者と交流ができるようになると楽しくなりました。
 今は、友の会の浅草橋手話サークルの代表を務めています。

 手話を知らない難聴の盲ろう者や健常者など、手話を初めて学ぶ人も大勢参加しています。
 サークルでは、サポーターの助けを得ながら進行しています。
 指文字のしりとりをしたり、簡単な手話単語で表す文章をつくって皆で表現してもらったり、工夫して教えています。

 あるとき、触手話を使う盲ろう者と手話の初心者の方と、ペアになって練習してもらいました。
 「触手話なんてできない……」という声もありましたが、「大丈夫!」と励ましながら、練習をしてもらいました。

楽しそうにコミュニケーションしている様子にうれしく思いました。
ぜひ盲ろう者と交流しませんか?

盲ろう者との接し方

渡井 秀匡(全盲難聴)

 盲ろう者は目と耳の両方に障害があるため、自由に外出することが難しく、いつも一人でいることが多いです。故に、人と話す機会が少なく、コミュニケーションに飢えている人も少なくありません。

 また、盲ろう者は周囲の状況が掴めないので、周りに人がいても気づかないことがあります。従って、周りの人から手を触れてくれることにより、盲ろう者は人の存在や他者との繋がりを実感することができます。

 盲ろうの人を見かけたら手話や指点字ができなくても手を触れて自分の存在を知らせてください。